研究概要 |
ホルモン受容機構異常症スクリ-ニングに向けて,われわれは従来繁雑な測定法であり,研究室レベルのものであったGTP結合蛋白(Gs)活性測定法を,簡易化する工夫を行った。すなわち以前はマウスリンパ腫の培養細胞株でGsの欠損したcycーS49株の細胞膜を用いていたが,今回これに代わって人血小板膜分画を用いる測定系を新しく開発した。この測定法は,1.測定サンプルの膜分画をコ-ル酸で可溶化し,2.GTPーrーSと30℃2時間処理し,Gsの活性化を行う。3.これを血小板膜分画に加え,0℃20分間置き再構成を行う。4.これをadenylate cyclase活性測定系に加え,30℃10分間置き生成したcAMPをRIAにて測定するものであり,従来法に比べ簡便であり,精度,感度,直線性も良好であった。この簡便法を用いて偽性副甲状腺機能低下症I型の患者について検討を加え,Gs活性値の低下と病態との関連についても新しい知見を得た。 この方法に検体少量化,測定時間の短縮化などの改良を加え,スクリ-ニング法として十分使用可能とした。本測定系を用いて各種疾患についてスクリ-ニングを行ったところ,アルコ-ル中毒患者においてアデニルシクラ-ゼ活性の低下が見られた。詳細を培養細胞におけるアルコ-ル投与実験により検討した結果,急性期におけるアデニルシクラ-ゼ活性の上昇と慢性期におけるアデニルシクラ-ゼの活性低下が証明できた。また本測定法により,従来有効な鑑別法の無かったアルコ-ル中毒患者の鑑別診断が行えることがわかった。 このスクリ-ニング法を用いて,ホルモン受容体機能異常症スクリ-ニングを行った。さらに偽性副甲状腺機能低下症でGsの低下している患者のGsのmRNAを測定したところ,Gs mRNAの低下しているものとしていないものがみられた。すなわち,Gs活性の低下は,Gs遺伝子,mRNA,タンパクなどのさまざまな段階での異常によりもたらされる可能性が考えられた。
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