研究概要 |
塗抹標本で骨髄ペルオキシダ-ゼ(MPO)陰性と判定される急性白病には、骨髄系抗原(CD13やCD33抗原)を発現するものがある。これらには、抗原発現が乏しく急性未分化白血病とされるものと一応定型リンパ球系腫瘍としての抗原群を発現し、上記骨髄系抗原を重複発現するものが含まれる。これら塗抹MPO陰性で骨髄系抗原発現のある急性白血病の細胞起源を正常造血分化地図上で解釈することは造血細胞の分化の理解には必須である。最近単離されたMPO遺伝子を用い、MPO発現を遺伝子発現のレヴェルで検索し、この問題の理解に資するのが本研究の目的である。 前駆B細胞ALLにCD13・33を重複発現する症例17例を収集した。15例は、電顕及ぴRNAでもMPO陰性であった。2例では、電顕及ぴRNAレヴェルでMPO発現を認めたが、塗抹標本では検出感度以下であった。他の抗原でこれら2群は、共らHLA‐DR陽性であったが、MPO陰性例では、HLA‐DQ陽性、しかしMPO陽性では、HLーDQはほぼ陰性な程低率なのが異なる。T細胞腫瘍については、CD1,3,4,5,8などを発現し細胞質CD3検出の容易な12例では骨髄球系抗原の重複発現さえ、全く認められなかった。より未分化段階(CD7、7+5,7+2,7+5+2、のみ発現)の9例では、全例に骨髄球抗原の発現を認め、内3例では、電顕・RNAのMPO陽性であり、その内2例ではCD3・RNAを検出可能であった。未成熟な程度とMPO発現との関係が明瞭かのが、T細胞腫瘍での特微であり、T細胞腫瘍のAML転換との関係で極めて興味深い。 MPO発現を〓進させるサイトカイン・化学物質を特定できなかったが、γIFNによりMPO遺伝子発現が抑制される事が判明し、この事象については内外の文献に未記載であり貴重な観察である。
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