研究概要 |
【研究目的】 片麻痺患者の清潔ケアをより客観的根拠に基づく実践とするために、麻痺側の麻痺手の皮膚細菌叢の分布状況,においの程度,発汗量を測定し、併せて麻痺レベル、ケアの実情などと関連づけた。さらに、麻痺手の汚れを簡便な清拭剤で清拭し、ケアの効果についても検討した。 【研究方法】 U老人専門病院に入院中の片麻痺患者とコントロ-ルとして麻痺のない患者を対象に、(1)両手掌部の皮膚の細菌叢の分布状況、(2)ポ-タブル型ニオイセンサ(新コスモス電機KK)を用いて手掌部のにおいの測定、(3)連続発汗測定装置、フォ-レスト1(KKフォション)を用いて、手掌部の発汗量の測定、(4)ADL、麻痺発症後の期間および看護ケアの実情などを検討した。さらに、(5)片麻痺患者の両手掌部をスキナクレン(持田製薬KK)で清拭前,直後,1,2,3時間後の菌採取し、ケア効果について調べた。 【結果の概要】 (1)手掌部の細菌数を定量的に好気性菌と嫌気性菌から算定したところ,麻痺手に有意に多くみられた。片麻痺患者の非麻痺手と麻痺のない患者の両手掌の細菌数の比較では,非麻痺手に細菌数がやや多いものの,ほぼ類似の傾向を示した。麻痺発症後の期間との関係では,麻痺手の細菌数が多い患者は麻痺発症後の期間が長く,麻痺手と非麻痺手の細菌数がほぼ等しい患者ではその期間が短く両者に有意差がみられた。(2)片麻痺群のにおいでは、麻痺手が非麻痺手に比べて有意に高値を示し、特に強度な拘縮のある患者は拘縮のない片麻痺患者より有意ににおいが高値であった。(3)手掌部の発汗との関係では、両手掌に差はみられなかった。(4)スキナクレンでの清拭後では、両手掌部の細菌数の減少がみられ、ケアの効果が示唆された。 つまり、片麻痺患者の麻痺手はさまざまに汚染されており、もっと麻痺側に関心をむけたケアや指導の必要性が確認された。
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