研究概要 |
従来の方式で発生できる負イオンビ-ムの電流密度はイオン源プラズマの密度,組成比,加速電圧等で制限され,核融合用に開発された大規模な装置でも高々〜1A程度であった。これに対して,パルスパワ-技術を用いると短パルス沿面放電プラズマから従来の10^3〜10^4倍の大電流を引き出せる可能性がある。 本研究は,パルスパワ-電源(5Ωー60ns)で駆動される同軸構造の磁気絶縁型二極管(ダイオ-ド)から発生される負イオンビ-ムを,プラズマ源の種類,絶縁磁場強度,陰極表面電流等のパラメ-タの広い範囲に渡って実験的に調ベ,負イオン形成に影響する因子を明らかにするとともに,この形式の装置の大出力負イオン源としての可能性を検討する事を目的とした。負イオン形成にはダイオ-ド動作初期に大量の中性粒子を供給する事が重要であると予測されたため,中心電極を冷却可能な構造とし,電極表面に埋め込んだパラフィンや氷をプラズマ源として動作させ,特にプラズマ源の影響に注目した研究を行った。 ダイオ-ドの加速電圧300〜500kV,電極間隔4〜10mm,プレパルス電圧レベル〜100kV,絶縁磁場強度0〜7kGのパラメ-タ領域で実験を行い,ダイオ-ド動作や発生イオン電流値に対するこれらのパラメ-タ依存性を調べた。その結果,プラズマ源に氷を用いてダイオ-ドの動作初期に粒子放出を盛んにしてやるとイオン電流は増加し,短パルス沿面放電による負イオン形成にはプラズマ源の影響が大きい事が明らかになった。また、再現性はあまり良くなかったが,プラズマ源をパラフィンとし,印加磁場5.2kGの時,ピ-ク値で約2kA(〜15A/cm^2)の負電流を観測した。 以上の結果,イオン源プラズマを供給する物質やダイオ-ドの動作パラメ-タを最適化する事により,この形式の装置がGW(500keVー2kA)級の大出力負イオンビ-ムを発生できる事を示した。
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