研究概要 |
昭和59年に白山山麓白峰村畑地で捕獲した野生ハツカネズミ(Mus・m・molossinus)5頭(雄2,雌3)をクロ-ズドコロニ-で飼育維持していた集団の30個体(雄10,雌20)のうち4個体に、血清中に新たな電気泳動度を示す補体第3成分(C3・2と命名)が検出された。本研究では、C3・2の遺伝的解析を行うと共にC3・2遺伝子を標準型近交系B10への遺伝子導入を行い、近交系作出を行うことを目的とした。C3・2型を発現する野生雄個体は同時に従来迄の我々の報告したC3・1型に関しては、ABのヘテロ個体であった。この雄個体をC3・1B型のB10系雄に交配して得られたF_1仔の表現型はC3・1B型ホモ接合体とC3・1ABC3・2型を発現する個体がほぼ同数であった。現在B10系への戻し交配が3代目であるが、いずれの交配でも遺伝子型はF1の場合と同じであった。以上の結果は、新たに発見されたC3・2型遺伝子は、従来知られていたC3遺伝子座(C3・1)の近傍に存在し、発現が常にC31Aを併なっている結果からC3・2型遺伝子は、C・1型のアロタイプ遺伝子ではなく、野生マウス集団内でごく最近生じた遺伝子重複によるアイソタイプの可能性が高いと考えられる。C31A型遺伝子は我々がすでに明らかにした如く、日本産野生マウスに特徴的であることも本研究の結果を支持すると考えられた。本研究によって明らかにされた特色は、F1仔穴雑でC3・1AC3・2型ホモ接合体が検出されなかったことで、分離比もC3・1B型木も接合体と1:2であった。以上の結果は、重複遺伝子領域に致死性を生じさせる原因が存在する可能性を示唆する。現在C3・2型遺伝子の分子生物学的および抗アイソタイプ血清を作出することを含めた血清学的検討を行っている。
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