研究概要 |
スンクスのNAG,OKI,BAN,NJの各ラインでは染色体数が2N=40,スリランカ産由来のSRIでは2N=30であった.スリランカ産はいままで東海岸のTrincomaleeで採集されたものが2N=32という報告があるだけだったが,西海岸では2N=30の集団が生息していることが明らかになった.2N=40と2N=30の核型を比較すると,共通する常染色体は9対で,このうちA群に分類したメタ型染色体4対(m1,m2,m3,m4)およびサブメタ型染色体1対はその特徴ある形態から容易に同定できる.B群に分類した4対の染色体は小さなアクロ型またはサブアクロ型であった.C群に分類した染色体は2N=40の核型 ではアクロ型10対,2N=30核型では大きなメタ型が5対であった.この相違はSRIとNJとの交配から得られたSNJでも確認でき,常染色体の腕数が共に48であることから,ロバ-トソン型癒合によっているものと考えられた.すなわち2N=40の核型のC群アクロ型10対が,2N=30の核型では大きなメタ型の5対に変化したため常染色体としては10本減少したものである.2N=40のNJと2N=30のSRIとの交配からSNJを育成した.その結果F_1では2N=35となり,交配方法によって2N=30から2N=40の範囲で分離させることができた.このことはF_1では2N=35の配偶子が生産される減数分裂の段階 でN=15から20に分離することを示している.こうして現在ではSRIとNAGとの交配群からSNラインを育成しており,それぞれ相異なる染色谷を持ったラインが育成できるようになった.またSRIラインの関しては繁殖成績が芳しくないので,NAGとの交配からバロッククロスによって2N=30のラインの育成も併せて行っている.スンクスでは全ての型の染色体を有しており,マウスのようにアクロ型しか有していない動物に対して,ヒト染色体のモデルとしてはより適しているとも考えられる.
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