研究概要 |
最近,糖尿病の発症年齢が青年期にまで広がっていることは,糖尿病患者の奇形児出産率の上昇と合せて女性問題の1つになりつつある. 本研究は,20才前後の健康女子について身体諸計測,糖質代謝,食事調査,ならびに糖尿病に対する遺伝的要素の4種のmass screeningし,総合的な評価を行った.本研究の目的は,この4項目における標準範囲を一定度逸脱している者を見出し,この者を対象にした食事指導と運動指導を主体とする糖尿病予備状態改善策を確立するためスタ-トした. 平成元年度から平成3年度までの本学食物学科学生(総数248名)を被験者とし,調査を実施した.主な成果は以下の通りである.身体計測では,身長,体重,肥満度,4ヶ所の周囲長,腹厚,腹幅,ウエスト,ヒップの大多数が標準範囲内にあったが,数名の者が肥満度20%以上およびー20%以下を示した.皮下脂肪厚では,栄研式キャリパ-法による測定結果が,すでに報告されている国民栄養調査における同姓同年齢層での結果とよく一致していた.超音波式で測定した6ヶ所の皮下脂肪厚は,すべてこれまでに報告されている標準範囲内であった.食前と食後の尿糖値は,大部分が正常範囲内にあり,若干名が食後尿糖においてのみ異常高値を示したが,血糖値はすべて正常範囲にあった.被験者全員について行ったアンケ-ト調査の結果,3親等以内の血縁者からの発症率は2.1%であった.これは厚生省が毎年実施している全国規模の疾病調査結果とほぼcompatibleであった.本研究において独自に作成した食事診断票による食事調査の結果では,摂取エネルギ-量,PFC比ともに第4次改定日本人の栄養所要量の適性範囲内にあった.
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