研究概要 |
コレステロ-ルを多く含み常食する食品について,乾燥,加熱,過熱などの処理がコレステロ-ル酸化物生成におよぼす影響について薄層クロマトグラフィ(TLC)ならびにキャピラリガスクロマトグラフィ(GLC)による分析方法でこれまで実験,検討してきた.その結果つぎのような知見を得た.1)食品中にコレステロ-ル濃度や共存脂質濃度が低ければコレステロ-ル酸化物は生成しにくい.2)結晶コレステロ-ルは180℃以上の過熱条件ではじめて酸化物生成が生ずるのにたいして,数種の食品では“茹でる"程度の温和な条件でも酸化物生成が認められた.3)食品の中では卵および卵黄の加熱処理物が最も明らかな酸化物生成を示し、酸化物総量はコレステロ-ル含量の約5%であった。4)標準コレステロ-ル酸化物のケン化実験によればケン化の過程でさらに二次酸化物を生成することが示唆された.したがって食品のコレステロ-ル酸化物分析の前処理としての不ケン化物調製法は採用できないと考えられた.5)食品脂質からコレステロ-ル酸化物を調製するためにはシリカゲルカラムを用いて段階的にベンゼンーアセトン混合溶媒によって溶出する方法が有効と考えられた.6)酸化物生成時の共存促進因子について卵黄組成に類似したモデル実験系を設定した.その結果,共存リン脂質による酸化物生成促進が示唆された.7)過熱コレステロ-ル結晶の変異原性試験(Amesテスト)を行った結果,酸化物の細胞毒性が示唆されたがさらにこの点に関しては今後追究される必要がある.
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