研究概要 |
マクロファ-ジ系細胞株から得られたアクチビンは卵胞刺激ホルモン(FSH)の脳下垂体からの分泌促進因子として単離されたが,我々はこれまでの、アクチビンが卵巣顆粒膜細胞の文化を著しく促進することを見いだした。本課題では、アクチビンのシグナルが顆粒膜細胞内へ伝達される機構に焦点をしぼり種々検討して,下記の成果を得た。 1.アクチビン結合タンパク質の単離 各種哺乳動物の卵巣および脳下垂体からアクチビンと特異的に結合するタンパク質を精製した。精製標品のN末端アミノ酸配列分析の結果,この結合タンパク質は,FSH分泌抑制因子として得られているホリスタチンと同一物質であることが判明した。アクチビン結合タンパク質がアクチビンの分化促進作用を化学量論的に抑制すること,ならびに,ラット顆粒膜細胞上のプロテオグリカンに結合することを明らかにして、アクチビンのシグナル伝達調節機構の一端を解明した。 2.アクチビン受容体の単離 アクチビンには前赤芽球系細胞(マウスユレンド細胞,ヒト白血病細胞K562等)に対する分化誘導能のあること及びこれら細胞はアクチビン結合タンパク質を産生しないことに着目して,これら細胞からアクチビン受容体を精製した。精製標品はSDSーPAGEで単一バンドを示し、その分子量は70kDaと算出され,リガンドブロット法によりアクチビンの特異的結合能を有することが確認された。アクチビン受容体の全容を知る手掛かりが得られた。 3.アクチビンのILー1産生抑制作用 ヒト白血病細胞THPー1はホルボ-ルエステル存在下でマクロファ-ジ様細胞の分化すると同時に,ILー1を分泌するが,アクチビンは顕著にそれを抑制した。アクチビンの新しい作用として注目される。
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