研究概要 |
酵母遺伝子SARIは,ERーゴルジ体間輸送に温度感受性の欠陥をもつ sec12変異株のマルチコピ-サプレッサ-として分離されたものであり,その抑圧の機構は産物レベルでの相互作用によるものと推定されている.その産物Sarlpについては、これまでに,分子量21KDのGTP結合タンパク質であること,それ自身がERーゴルジ体間輸送に必須であること,そして細胞内では主に小胞体膜に局在するが可溶性のも存在することを示してきた.本年度は,さらにERーゴルジ体間輸送の無細胞系を用い,以下のことを明らかにした. 酵母のin vitro ERーゴルジ体間輸送を,Bakerらの報告に基づき,α因子の糖鎖修飾を指標として確立した.この反応で,sec12変異株より調製したsemiーintact cells(膜画分)は,in vitroでもin vivoと同様に温度感受性を示した.この系にSarlp過剰生産株より調製した細胞質可溶性画分を加えたところ,sec12膜の温度感受性はほぼ完全に抑圧された.この抑圧効果はSarlp自身によるものであることが示されたので,in vivoにおけるSarlpの生理活性をin vitroで再現できたものと考えられる.野生型およびGTP非結合型の変異Sarlpを大腸菌で作らせたところ,野生型Sarlpのみが活性を示した.また,GTPの非分解アナログであるGTPγSを結合した野生型Sarlpも活性をもたなかった.つまり,SarlpのERーゴルジ間輸送の機能には,GTPの結合とその水解が必須であることが示唆された.
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