研究概要 |
家兎骨格筋小胞体(SR)をトリトンXー100で処理することによって溶出されるアルギニン特異性ADPーリボシル転移酵素を精製し,その性質を検討すると共に,他の組織や細胞のADPーリボシル転移酵素と比較検討した.まずSR膜からトリトンXー100で溶出される転移酵素を,同じ膜からトリプシンで可溶化される酵素と比較すると,分子量も含めて両者は極めて類似の性質を示めすことから,SR膜のADPーリボシル転移酵素は酵素の極く一部が膜に組み込まれていることが推測された.一方,他の組織に存在するADPーリボシル転移酵素と比較する目的で,ニワトリ各組織におけるADPーリボシン転移酵素を検討した処.末梢多形核白血球(ヘテロフィル)にその活性が著しく高く,しかも内在性33kDa蛋白質(p33)が標的蛋白質であることが分かった.以前,われわれはSR膜酵素の標的蛋白質はCa^<2+>ATPaseであることを見出しているが,SR膜酵素はp33を修飾しないし,反対にヘテロフィル酵素はCa^<2+>ATPaseをADPーリボシル化しない.また前者はSH剤によって活性阻害を破るが,後者の酵素はこれによって活性が著しく上昇するなど,両酵素はその性質を全く異にすることが分かった.このように,同じアルギにン特異性ADPーリボウス転移酵素であっても,種,組織や細胞によっていくつかのサブタイプが考えられしかもそれぞれに標的蛋白質が存在するものと思われる.従って,これら標的蛋白質の生物学的活性の同定こそADPーリボシル化反応の生理的意義の解明に重要である.
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