研究概要 |
本研究は、共在対流時の原子炉炉心内のサブチャンネル間の乱流熱流束を実験的に求めることを目的として計画された。速度と温度を、流れを乱すことなく同時測定するたるにレ-ザ-を用いた。光ファイバ-を用いたレ-ザ-・ドップラ-流速計のプロ-ブを作製し、これをガラス管にニクロム箔を巻いたヒ-タ内に挿入して、光を流路内に導いた。速度は水の中に浮遊するシリコンカ-バイト粒子からの散乱光より求め、温度は水の中に溶けているロ-ダミンBの蛍光強度から算出した。粒子から散乱光と蛍光はプロ-ブ内の受光ファイバ-に入れられ、ファイバ-の出力瑞で色分離された後、光検出器に送られた。 測定点はロッドのギャップの中心に固定され、サブチャンネル間の乱流熱流束が求められた。レイノルズ数=50〜400,グラスホフ数(入口と出口の温度差基準)=300〜1300において、パワ-スキュ-を変化させて実験が行われた。実験で得られた乱流熱流束は従来推測されていた値より2桁ほど小さく、ナトリウム冷却炉では、サ-マルプル-ムによるサブチャンネル間の熱輸送効果は無視できるものと考えられる。乱流熱流束は、レイノルズ数,グラスホフ数が大きいほどその値は大きい。乱流熱流束が負になる、いわゆる逆勾配拡散といわれる現象が観測された。この逆勾配拡散が生じたときの時系列デ-タを観察すると温度変化と速度変化の間に時間的なずれが生じていることが判明した。乱流熱流束が予想されたよりも小さい原因の一つに、このような速度と温度との間の位相のずれがあるものと考えられる。 この研究で用いたレ-ザ-流速計と蛍光の強度変化による速度と温度の同時測定システムは良好に作動し、バンドル内だけでなく一般の熱流体の研究に非常に有用であると考えられる。
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