研究概要 |
ジオキシン(通称ダイオキシン)類の中でも2,3,7,8四塩化ジベンゾパラジオキシン(以下TCDDと略)はマウスで発生障害作用を示す。TCDDはステロイド受容体類似の受容体を介して毒性を発現するとされる。そこで、妊娠12日(膣栓発見日=0日)のJcl:ICRマウスに合成エストロゲンの一種であるエチニルエストラジオ-ル(EED)または合成プロゲスチンの一種であるノルエチンドロン(NOD)の0.2,1または5mg/kgを経口投与し、2時間後にTCDDの20μg/kgを経口投与して、EEDまたはNOD前処置により、TCDDの催奇形作用がどのように修飾されるかを観察した。妊娠18日に母体を屠殺して胎仔を取り出し、口腔を含む外表観察の後、胎仔をブアン液で固定し、内臓の観察を行った。本実験条件下でのEEDまたはNOD単独投与は発生障害作用を示さなかった。TCDD投与による胎仔の口蓋裂誘発頻度は溶媒(コ-ン・オイル)前処置対照群で50%であったのに比べ、EED1mg/kg前処置群では82%と、やや高まる傾向が示された。また、胎仔死亡率は、対照群の6%に対しEED5mg/kg群では17%と軽度に上昇した。NOD5mg/kgでも口蓋裂頻度は75%と上昇し、EEDと類似の修飾作用が認められた。EED、NOD実験とも、胎仔腎臓については観察中である。現在、修飾因子の投与量を一定にし、TCDDの量を変えて用量反応関係を確認しつつある。さらに、発生障害作用以外の毒性指標、例えば母体の肝臓、胸腺重量などについても検討中である。
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