研究概要 |
アモルファスシリコンをベ-スとする太陽電池の大規模な実用化には、従来のアモルフェスシリコンの研究に欠けていた材料化学的問題について詳細な検討を加えていく必要がある。本研究は、原料ガス及び分解過程の化学反応制御という観点から、高品質シリコンアロイ膜の合成と積層化の新しい手法の開発を追求する。 本年度の研究成果を以下に要約する。 1.a-Si:H/a-SiC:H,F接合界面のバンド不連続量の測定 Si_2H_6とCF_4から作製したa-SiC:H,F膜は高い光導電性を示し、アモルファス太陽電池の窓層材料として期待が持てることがわかっている。また昨年度の実験から各層を成膜後、真空びきを行って積層したa-Si:H/a-SiC:H,F積層膜の界面は、組成が原子レベルで急峻に減化していることがわかった。そこでa-Si:H/a-SiC:H,F接合の価電子端の電子状態をin situでXPSを用いて調べ、積層膜における価電子端の不連続量は、0.6eVであることがわかった。a-Si:H層、a-SiC:H,F層のバンドギャップがそれぞれ1.8eV,2.4eVであることから、a-Si:H/a-SiC:H,F超格子は伝導帯がフラットな特異なバンド構造を有していることを明らかにした。 2.in situ XPSによるa-SiGe:H,F/a-Ge:H,F積層膜界面の評価 アモルファスシリコン太陽電池の高効率化を目的としたタンデム型セルのナロ-バンドギャップ材料として注目されているa-SiGeとa-Geの接合界面をin situ XPSを用いて原子レベルで解析し、その成長モ-ドを考察した。 光電子強度の変化と成長機構についてのシミュレ-ションから、a-Ge:H,F上のa-SiGe:H,Fの成長メカニズムがGeの濃度によって大きく異なることが示唆された。Ge濃度の低いa-SiGe:H,Fは均一な膜成長により急峻な界面が形成されるのに対して、Ge濃度の高いa-SiGe:H,Fは島状またはクラスタ-状に成長し易い。 (今後の方針) 現在PPP CVD法の界面の乱れと表面反応との関連について研究中である。バンド構造に敏感な分析法である、PAS,PDSの測定装置を作製中である。また、PPP CVD法の励起源の一つを高周波からμ波にすることにより広汎な多層膜連結合成の可能性を広げ、a-SiN:H層を含む非晶質超格子の作製を行う。
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