研究概要 |
有機金属ポリマーおよび高分子錯体の焼成による超微粒子金属均一分散型炭素材の研究に関して次の事を明らかにした。 1)ジエニル鉄(カルボニル)アクリレートとアクリロニトリルの共重合体は800℃付近ではセメンタイト(Fe_3C)粒子のみが発生し、さらに1000℃まで加熱するとαーFe超微粒子となることをメスバウァーおよびX線解析によって明らかにした。一方、石灰ピッチにポリビニルフェロセンを溶解したものでは600℃の加熱でもαーFe(粒径20nm)が生成し、1000℃加熱により凝集し粒径100nm程度のαーFe粒子となる。Ni,Co錯体を結合したポリマーの焼成でもほぼ同じ傾向が見られた。これらはいずれも1000℃焼成後、高い電気伝導性を示し磁性体にもなる。また過酸化水素の接触分解触媒としても優れた効果を示した。 2)有機金属ポリマーの合成法を開発するためにCpMo(Co)_2やCpw(Co)_2を側鎖に有するポリマー、cp^*Tacl_4やCpNbCl_4との反応による新ポリマー合成を行なった。これらを焼成した時に生成する超微粒子の組成を検討した。 3)一連の有機金属ポリマーをエキシマーレーザー(パルス)やYAGレーザーで焼結する試みを行なった。アブレーションが優先し超微粒子が発生しにくいのでCO_2レーザーの使用を検討している。 4)Fe,Co,Ni,Rh,Ptのような後周期遷移金属と異なり、Tz,Zr,Ta,Nb等の前周期遷移金属を含有するポリマーの焼成では金属でなく、酸化物や窒化物などの超微粒子になることが判明した。ポリマー中に含まれる配粒子(ヘテロアトムを含むもの)の成分により酸化物(例えばポリビニルアルコールに結合した錯体を用いた時)、窒化物(例えばポリビニルピリジン錯体を用いた時)に変換される。X線解析、TEM測定等により焼成温度を生成物の粒径、組成との関係を明らかにした。
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