研究概要 |
過年度において開発に成功した培養担体が初代培養肝細胞に関し極めて優れた性能を示した。この材料表面の微細構造の検討の一助として、これら機能発現に有効に働くペプチド類の構造解析を行いシミュレ-ションを行うこととした。フイブロネクチンとラミニンの細胞接着活性部位ペプチドであるHー(Gly-Arg-GlyーAsp-Ser)nーNH_2、Hー(Tyr-Ile-Gly-Ser-Arg)nーNH_2(n_21,2,3それぞれmono di、tri FN、LAMと表示する)を固相ペプチド合成法の手法を用いて合成した。重水中で測定した^1H-NMR、^<13>C-NMRスペクトルの化学シフトの変化はmono、di、tri FNでは観測されず、mono FNを構成する4種類のアミノ酸残基は二量化、三量化しても側鎖周辺の環境にはほとんど変化がなく、di、tri FNはmono FNが形成する分子構造を維持していることが示唆された。LAMペプチドでは二量化、三量化するに従い、ArgのαCHとδCH_2TyrのβCH_2、C_2-6HとC_3ー5Hに帰属される^1H-NMRスペクトルの化学シフトが変化し、中でもArgのαCHは最も大きく0.3ppm変化した。LAMペプチド中のArg、Tyr残基が二量化、三量化により環境変化しているものと考えられ、di、tri LAMはmono LAMが形成する分子構造を維持できず新たな構造を形成しているものと考えられた。さらにABX系スペクトルを与えるAsp、Ser Tyr側鎖のインフォメ-ション解析を行ったところ、mono、di、tri FNにおいてすべてのAspのβC、αCに対しゴ-シュ配置が安定で、serのβCはαCに対してトランス配置が安定であることが示された。これらの情報を基にマイコンによるペプチド分子構造のエネルギ-極小化計算を行いコンフォメ-ションモデルを得た。主鎖の構造はFN系ではβ-タ-ンI型、LAM系ではβ-タ-ンII型であることが明らかになった。
|