研究概要 |
〈CdSe薄膜における高密度電子・正孔プラズマの動的様相〉総合性能として,200fsの時間分解能をもつポンプ・プロ-ブ分光計を開発し,それを用いてCdSe中の高密度励起効果の超高速分光の実験を行った。試料としては,気相法で成長されたCdSeのバルク結晶(厚さ〜23μm)をイオン・ミリングによって4μmの厚さにしたものを用いた。ポンプ光としては,試料のC軸に対しておよそ45°の偏光を用い,プロ-ブ光の偏光は試料からの透過光に偏光子を入れることによってE〓C,E〓C両条件下でポンプ・プロ-ブの実験を行った。ここで,Eはプロ-ブ光の電場ベクトルを表す。E〓Cでの時間分解吸収スペクトルを調べると,プロ-ブ光の偏光をE〓CにしたときでもA-励起子のわずかな部分が吸収に寄与するが,このとき,ポンプ光によってAー励起子の線幅が広がり,また,励起子構造の消失が観測された。励起光子密度は〜10^<16>cm^2である。このとき,パルスの時間幅は自己相関でおよそ400fsである。ポンプが入ると,バンド吸収端の低エネルギ-側へのせり出しが起こる。A-励起子のエネルギ-でのバンド吸収量の時間変化をプロットするとバンド吸収の増加は始めの15psの間,ほぼ一定のスピ-ドで増加していく様子が見える。この現象はプラズマ相と励起子相の二相共存ととらえ,その境界が時間に依存すると考える事で説明できる。すなわち,電子・正孔プラズマが表面近くに高密度に励起されプラズマ相と励起子相の境界が膜厚方向に1.9×10^7cm/sのスピ-ドで動いていくとすると説明できる。このスピ-ドは音波よりも2桁程度速い。
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