研究概要 |
親水性有機溶媒中でのプロテア-ゼによるアミノ酸誘導体のエステル合成,エステル交換,及びペプチド合成反応の特性を明らかにすると共に,酵素固定化材料と固定化方法を系統的に調べ,有機溶媒中で長期間安定に酵素活性を保持するための担体構造と反応方法の探索を目的に研究を行ない,以下の結果を得た。 すなわち,従来酵素反応には不適とされていた水と混和性の有機溶媒中において,上記の緒反応に対してα-キモトリプシン,スプチリシンなどのプロテア-ゼが高い活性を示すことを見いだした,反応の動力学的研究から,エステル化とエステル交換反応においては,酵素のアシル化と脱アシル化がそれぞれ律速であると推定された,また水溶液中と比較して,有機溶媒中では酵素-基質問間の疎水性相互作用の比重が低下すると考えられる結果を得た,これらのプロテア-ゼは,縮合及び置換反応によるペプチド合成に対しても高い活性を示したが,水溶液中と比較して基質特異性に変化が認められた。 一方,酵素の固定化と活性の関係を多数の担体について検討した結果,キチン,キトサン,キシラン等の多糖類が優れた特性をもつことを見いだした。これらは,有機溶媒中で酵素の水和水の保持,基質の濃縮,及び酵素コンフォメ-ションの安定化により大幅な活性向上をもたらすと考えられる。さらに橋掛けキトサンピ-ズ(キトパ-ル)への吸着固定化により,20日以上の長期間安定な酵素機能の発現が認められた,同様に,キャスト法によりPVAまたはPVA/キトサンフィルムへ固定化したプロテア-ゼは,エステルまたはペプチド合成において長期間安定な触媒活性を示した。
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