研究概要 |
II-VI族半導体超格子は、光素子等の新機能性材料として多岐の応用への可能性が指摘され、活発に研究されている。我々は、亜鉛化合物(ZnS、ZnSe、ZnTe)からなる半導体歪超格子の結晶構造と基本的な電子状態、光学的性質を第一原理の計算(LDA擬ポテンシャル法全エネルギ-計算)を用いて調べた。1.歪超格子の結晶構造について、次が明らかにされた。いずれの亜鉛化合物超格子系も、(1)基板のない場合、歪の分布は界面1原子層以外一様で、内部の歪の大きさは構成物質比の線形な関数になる。(2)基板上超格子の場合、界面に平行な格子定数が基板の値と等しい基板のない超格子の場合に相当した構造となる。(3)界面での電荷移動のために超格子構造はそれ自身準安定構造である。2.種々膜厚の各物質組超格子の電子状態の次の特徴を明らかにした。(1)界面に平行・垂直な歪の違いにより、Xz・Xxy状態のエネルギ-は分裂する。(2)GaAs基板上ZnS/ZnSe系は膜厚が小さい時、軽いホ-ルギャップの物質になる。(3)超薄膜超格子においても種々の状態の波動関数は一方の物質に局在し、エネルギ-ギャップ値は膜厚が大きくなると共に小さくなる。(4)X_<XY>L状態のエネネギ-は、構成原子層数の偶奇(対称性)により分裂したり縮退し振動する。3.実験の解析に必要となる重いホ-ル状態のバンドオフセットを求めた。(1)GaAs基板の場合、オフセットとタイプは各々、ZnS/ZnSe(0.86eV,l)、ZnSe/ZnTe(1.29eV,l')、ZnS/ZnTe(2.15eV,l')となる。ZnS/ZnSe系での実験値(0.75〜0.90eV)とよく一致している。(2)歪の大きさが変化するとオフセットは主に、オ-ダ-が同じで相反する2つの要因(界面電荷移動量の変化、変形ポテンシャルレベルシフト)で変化することが定量的に明らかにされた。オフセット値の評価等基本物性の解明には、本研究のような第一原理からの研究が必要であると共に、本研究で得られた多様な特徴は結晶評価・新機能探索などに役立つと期待される。
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