研究概要 |
従来の研究に有機磁性材料を開発すると言う現実的な観点を加味し、開殻構造中心を長鎖共役系主鎖の側鎖に配置する新しい分子設計を進めた。本年は特にジアセチレン結晶のトポ化学的重合性に着目し、一挙に1分子あたり10^2〜10^3個のスピンを揃えたポリジアセチレン側鎖のどこに付けるべきかと言う分子設計は、ポリアセチレンの場合と同様に、オブチニコフらの理論式、S=ln^*-nl/2によって行った。1-(置換フェニル)-1,3-ブタジイン1の場合、分子が平行および逆平行にスタックした結晶構造においてそれぞれ1,1´/4´,4´´および1,4´重合の可能性があり、都合4通りのポリマ-生成が考えられる。この内平行の1,4´重合および逆平行の1,1´/4´´重合でベンゼン環上の開殻構造中心は強磁性的に相互作用すると予測される。1の置換基としてa)3-t-BuNOH-4-Cl-(mp140℃)、b)3-t-Bu(NO)-4-Cl-(mp81〜82℃)、c)4-CHN_2、d)3-N_3等を選びモノマ-合成を行い、固相重合を試みた。反応をDSCでモニタ-すると、正常の重働を起こす結晶は240±20cal/gの発熱を呈することが明らかとなった。X線結晶構造解析によると、1aの三斜晶では分子がa/c対角線方向に積層し、このように配列したジアセチレン分子のカラム同士が水素結合により更に相互作用をした構造を持つ。これに1bをド-プした混晶を作り重合を行い、ニトロキシドラジカルを全窒素官能基の10%未満含むポリマ-を得た。ESRスペクトルには、3000G付近に幅広いシグナルが観測され、これは100〜200G程度の局所磁場に相当するスピンの秩序形成を示唆している。Faraday型磁気天秤で測定した磁化率の温度および磁場依存からも、スピン数個にわたる強磁性的相互作用と150K付近でのある種の相転位直認められた。1c、1dのポリマ-を極低温で磁気天秤の磁場の中で光分解レポリカルベン、ポリナイトレンを得た。
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