研究概要 |
伝導性やスイッチング機能を有する電荷移動錯体の開発をめざして、新しい有機電子供与体の合成とその錯体の物性探索を行った。まず、昨年度までに有機超伝導体の成分となることが見い出された電子供与体、DMETの発展として、トリメチレンジチオ基をもつTTF誘導体、DMTTを合成した。合成は非対称カップリングの方法を用い、電気化学的な方法でそのラジカル塩を10種ほどつくった。電気伝導度を測定した結果、PF_6,Au(CN)_2などの塩は100Scm^<-1>程度の高い室温伝導度を示した。また、Ag(CN)_2,Au(CN)_2塩は、それぞれ170K,130Kまで金属的な温度変化を示した。その他は半導体的であった。PF_6塩とReO_4塩についてはX線結晶解析を行なった。いずれも、カラム構造をとっているが、カラム間の相互作用が弱く、二次元性が低いことが分った。 次に、ピラジン環をもつ非対称なTTF誘導体をいくつか合成した。それらのうちメチル基の置換したDMPについては、ClO_4、I_3塩がそれぞれ250K,120Kまで伝導度の金属的温度変化を示した。また室温伝導度が1000Scm^<-1>にも及ぶラジカル塩が、DMPETで見い出された。 TTF骨格を含まない新しい電子供与体の開発も行なった。チオフェンを直線状に縮合させたチェノチオフェン化合物で、五員環縮台体(下図)まで合成し、優れた供与体となることを確かめた。
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