研究概要 |
本研究代表者らは先に、セラミックスが生体の骨と結合する生体活性を示すための条件は、生体内でその表面に骨類似のアパタイト層を作ることであり、このアパタイト層の形成は、セラミックスから溶出するCa(II)とSi(IV)イオンと液体中のP(V)イオンの反応によって生じることを明らかにした。この結果に基づけば、種々の基板をCa(II)とSi(IV)を溶出し易いガラスと向い合せて擬似体液中に浸漬すれば、それら基板表面にも骨類似のアパタイト層を形成させることができるのではないかと考えられる。この方法によれば、加熱処理を経ないので有機高分子材料にもアパタイト層をコ-ティングすることができ、しかもそのアパタイト層は体内に似た環境下で作られるので、従来の加熱処理を経て作られるアパタイトより優れた生体活性を示すと期待される。 そこで本研究では、シリカ(SiO_2)ガラス、スライド(Na_2O-CaO-SiO_2)ガラス、アルミナ(Al_2O_3)セラミックス、ジルコニア(ZrO_2(Y_2O_3))セラミックス、SAS316ステンレス鋼、チタン(Ti)、Ti-6Al-4V合金、白金(Pt)、金(Au)、ポリメチルメタクリレ-ト、ポリエチレンの10×15×2(または0.1)mmの大きさの板状試料をMgO4.6,CaO44.7,SiO_2,34.0,P_2O_516.2,CaF_20.5wt%の組成ガラスの12×18×2mmの大きさの板と0.2mmの距離を隔てて向い合せ、無機イオン濃度だけをヒトの結漿のそれにほぼ等しくした(Na^+142.0,K^+5.0,Ca2^<+2>.5,Mg^<2+>1.5,Cl^-147.8,HCO_3^-4.2,HPO_4^<2->1.0,SO_4^<2->0.5mM)、PH7.25,温度36.5℃の水溶液に浸漬し、7日後それら基板のガラスと向い合った表面を、薄膜X線回折、フ-リエ変換赤外反射分光法及び走査電子顕微鏡観察により調べた。その結果、上記いずれの基板表面にも、厚さ約1μmの均質で連続した、格子欠陥が多いか結晶子の小さい炭酸イオン含有アパタイトの層が形成されていることが確められた。
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