研究課題/領域番号 |
01604562
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
山内 淳 京都大学, 教養部, 助教授 (10027071)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 負のスピン密度 / 有機強磁性体 / ENDOR / 三重共鳴 |
研究概要 |
この研究は有機化合物の磁気的機能性を追求することを目的としているが、そのアプロ-チの仕方は、有機化合物の負のスピン密度に注目する。その実験的決定法(電子核二重共鳴ENDORと三重共鳴)の確立をまず第1に行うことであったが、今年度温度可変装置(温度コントロ-ラデジタル設定ユニット)を導入することにより、ENDORおよび三重共鳴実験の温度設定をデジタル的に行うと同時に、その設定温度が精度よく行えるようになったため、ENDORおよび三重共鳴の高感度化、低雑音化が可能になった。 この装置を用いて、対象のラジカルを陰イオンラジカルにまで拡張することができた。今年度カチオンラジカル(ウルスタ-ズ青過塩素酸塩)の測定も行ったが、負のスピン密度を決定する三重共鳴実験に理解できない現象が観測され、今後の問題として残された。陰イオンラジカルとしてはビフェニル陰イオンラジカルのENDORおよび三重共鳴を測定し、理論的に予測されている原子上で負のスピン密度を確認した。 さて、このスピン密度に注目し、分子間相互作用が強磁性的になりうるかというMcConnellの機構を検討するための分子を今後順次調べていく必要がある。今年度まず取り上げたのはガルビノキシル中性ラジカルである。これのENDORと三重共鳴法は比較的容易で、安定な測定が可能であった。えられたスペクトルの解析から、ESRにあらわれているすべての水素核の超微細結合定数はすべて同符号で、正であることが判明した。従って、これが結合する炭素上のスピン密度はいずれも負であることになる。また、分子中心の炭素上の負のスピン密度はきわめて大きく、これが、分子間相互作用において強磁性的に働く大きい原因であろうと解釈される。有機強磁性体実現へのアプロ-チとして、アリル骨格を基本とする分子設計が有力であると指摘された。
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