研究概要 |
II_A-VI_B族化合物半導体(CaS,SrS)は薄膜エレクトロルミネッセンス(EL)素子の発光層母体材料として注目を集めている。この理由はCaS,SrSが大きなバンド・ギャップをもち、希土類イオン(Eu,Ce)を添加することにより、容易に種々のEL発光色を得ることができることによる。しかし、CaS,SrSはイオン性の強い結晶でイオウ抜けを起こしやすいため、格子欠陥が生じやすく良質な薄膜を得ることが困難である。本研究では、イオウの共蒸着や熱処理が薄膜成長に与える影響を明らかにし、さらに格子欠陥の制御の方法について検討する。得られた結果を以下に記す。 1.薄膜成長におよぼすイオウの共蒸着の効果をオ-ジェ電子分光法(AES)により調べた。SrS薄膜中のSr,S,O原子のAES信号の深さ方向の変化を調べた。イオウを共蒸着しない場合、作製したSrS薄膜は多量の酸素を含むが、イオウを共蒸着して作製した薄膜中では酸素の量が減少することを見いだした。その結果、SrS薄膜の純度が向上し、格子欠陥の発生を抑制されると考えられる。このことが結晶性の改善とEL輝度の向上をもたらすものと考えられる。 2.電子線蒸着法により作製したSrS薄膜を走査電子顕微鏡(SEM)により観察した。SrS多結晶薄膜の表面はかなりでこぼこしており、グレインサイズ0.1〜0.2μmの柱状の構造をしていた。このグレインサイズはZnS多結晶薄膜の典型的なグレインサイズの1/5であり、SrS薄膜の結晶性はZnS薄膜に比較してかなり劣っている。高いEL効率を得るためにはグレインサイズを増大し結晶性を改善する必要がある。 3.SrS薄膜の熱処理効果について検討した。基板温度を比較的高温で作製したSrS薄膜は熱処理に関係なく(200)面に強く配向する。また、(200)面の半値幅△2θは400℃付近の熱処理温度で最小となった。
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