研究概要 |
前年度にひき続き、CuInSe_2を中心に研究を行った。また、I-III-VI_2族から導かれるCdInGaS_4についても調べた。 1.CuInSe_2 Znをド-プしたCuInSe_2単結晶の電気抵抗率、Hall係数を77K〜300Kの温度領域について測定した。これより求めたHall移動度の温度変化から、電子は低温ではイオン化不純物によって散乱されていることがわかった。光吸収スペクトルの測定から、吸収端のすそのひろがりは、キャリア濃度の増加と共に増大していることがわかった。Cd,Zn,In,Seをそれぞれド-プした試料のフォトルミネッセンススペクトルを測定した。Seをド-プしたP形試料のスペクトルは三つの主なピ-ク(0.98eV,1.02eV,1.03eV)から成るが、Cd,Zn,Inをド-プしたn形試料は、いずれも0.9eV近傍にピ-クを持つ幅の広い発光バンドを示した。Znをド-プした試料の発光ピ-クは、ド-プ量の増加と共に長波長側へ移動した。また、このピ-クは励起光強度の増加、温度の上昇、いずれの場合にも高エネルギ-側へ移動したことから、発光はドナ・アクセプタ対発光であると考えられる。Hall係数の温度変化のデ-タと共に解析した結果、ドナレベルは伝導帯の下0.02eV,アクセプタレベルは価電子帯の上約0.1eVに存在することがわかった。 2.CdInGaS_4 Cd_3InGaS_6は低温で強い緑色発光を示すが、結晶構造をX線回折で調べたところ、CdSとCdInGaS_4の積層した物質であり、この積層性が緑色発光に強く関わっていることがわかった。すなわち、われわれが見いだした強い緑色発光は、CdInGaS_4結晶中にできている自然超格子によるものと考えられるに至った。
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