研究課題/領域番号 |
01614520
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡山 博人 大阪大学, 微生物病研究所, 教授 (40111950)
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研究分担者 |
小野 泰子 大阪大学, 微生物病研究所, 教務職員 (70194602)
野島 博 大阪大学, 微生物病研究所, 助教授 (30156195)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
1989年度: 11,000千円 (直接経費: 11,000千円)
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キーワード | EGFシグナル伝達経路 / 発癌遺伝子 / 発癌シグナル伝達経路 / NRK体細胞遺伝子 / 癌形質 |
研究概要 |
今日まで、50以上にも及ぶ発癌遺伝子が発見されているが、これらの発癌遺伝子が作用する細胞内シグナル伝達経路の解明が、現在、世界的に癌研究の焦点となっている。そこで、変異株を用いた遺伝学的解析を活用して、細胞内発癌シグナル伝達経路を探った。まず初めに、EGFとTGF-βによって癌化が起きない二種のラットNRK細胞変異株を樹立した。 解析の結果、共に劣勢形質を持ち、お互いに相補する、EGFシグナル伝達経路に欠陥がある変異株であった。いろいろな発癌遺伝子に対する感受性と、EGFとPDGFによるDNA合成誘導の有無を調べた結果、1.NRK細胞においては、EGFシグナル伝達経路が、唯一の細胞内発癌シグナル経路であること、2.驚くべきことに、核型発癌遺伝子の一つであるfosと細胞質型発癌遺伝子であるmosの作用点が細胞膜上であること、3.ras遺伝子が、EGFシグナル伝達経路の一員であるらしいこと、4.SV40T抗原とポリオ-マmT発癌遺伝子の作用点が細胞膜であるのに対し、アデノE1Aの作用点が、細胞質であること、5.EGFシグナル伝達経路の途中で、DNA合成誘導シグナルが分岐し、このシグナルのみでは完全な癌形質が発現されないことが、判明した。更に、この二つの変異株が、それぞれc-yesとc-rafによって相補され、EGFおよび種々の発癌遺伝子に対する感受性が回復することが明らかとなった。 以上の結果から、従来全く不明であったEGFシグナル伝達経路、即ち発癌シグナル伝達経路の一部が解明された。特に興味深いのは、c-yesとc-rafが、この順序で、この伝達経路を形成していることと、c-rafが欠損すると、DNA合成誘導が起きるにもかかわらず、完全な癌形質が発現しないことである。この事実は、今後どのような機構で癌形質の発現が起きるかを研究する上で、非常に重要な手掛と考えられる。
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