研究概要 |
線維芽細胞(10T1/2)に導入すると筋芽細胞を誘導することのできる遺伝子、MYOD1のDNA結合領域をプロ-ブとして同様の性質を持つ遺伝子、MyogeninのcDNAをクロ-ン化した。構造解析の結果、各種の筋細胞分化誘導因子の間には中央部分のmycドメインと共にC末端に相同性の高い部分があることを発見し、前者をドメインI、後者をドメインIIと名ずけた。ドメインIIの構造上の特徴から、ドメインIIは蛋白間、あるいは三次構造の形製に関与することが推定される。又、ドメインIIを人為的に欠失した場合には、その筋細胞分化誘導能が著るしく低下することも観察された。 MyoD1とMyogeninの生物学的な機能を調べるために各々、10T1/2細胞に導入し、強制的に発現させ、得られた細胞の性質を調べた。その結果MyoD1とMyogeninは次の点で異なっていた。(1)MyoD1は細胞の増殖を著るしく低下させるがMyogeninは増殖能を高める方向に作用している。(2)MyoD1の発現によって誘導された筋芽細胞は容易に細胞どうしがfusion、多核の筋管細胞には分化する。又この分化誘導には培養液より血清を取り去る必要がないこと、内在性のMyoD1,Myogenin遺伝子の発現も誘導されていることが明らかとなった。(3)Myogeninの発現によって誘導された筋芽細胞の多くはどんどん分裂し、fusionをおこすものは少ないが、培養を続けるとfusionするようになる。分裂をくりかえしている状態の筋芽細胞では内在性のMyoD1,Myogeninの発現が誘導されていないこと、fusionをひきおこすには培養液中より血清をぬかなければならないこと、又、血清をぬくと、内在性のMyoD1,Myogeninの発現が誘導されていることなどが明らかとなった。
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