研究概要 |
心筋収縮・弛緩及びその調節に関与する細胞膜,心筋小胞体膜の受容体,イオン・チャンネル,イオン・ポンプが分子レベルで明らかとなり,その基本的性質と共に調節機構の分子レベルでの解析が進んだ.細胞膜のL型Caチャンネルでは,チャンネル蛋白質燐酸化によるゲート開閉機構の修飾を単一チャンネル・レベルで明らかにした。ムスカリン性アセチルコリン受容体では,β受容体燐酸化酵素と類似の酵素により本受容体が燐酸化されることが明らかとなり,受容体脱感作機構との関連が注目される.心筋小胞体Caポンプでは,調節蛋白質ホスホランバンによる調節機構が,Caポンプ・ホスホランバン両分子の直接の相互作用によることが証明された.心筋小胞体Ca遊離では,Ca遊離チャンネルのcAMP依存性燐酸化による調節機構の存在する可能性が示唆された.またカルモジュリン依存性燐酸化酵素アイソザイムが心筋で同定・単離され,本酵素が細胞膜や筋小胞体などの膜蛋白質の燐酸化を含め広範な細胞機能調節に関与する可能性が示された.心筋収縮蛋白質の分子運動解析では,ミリ秒の分解能をもったX線回析装置が開発され単収縮での収縮蛋白質の分子運動解析が進んでいる.心筋細胞内Ca動態の研究では,アドレナリン,アセチルコリンなどの心作動薬の効果の検討から,心筋への作用発現にこれらの薬剤によるCa動態の変化以外に収縮蛋白質のCa感受性の変化も重要であることが見い出された.このように心筋興奮収縮連関の基本機構が次第に分子レベルで理解されるようになりつつあり,今後細胞レベルでの現象との関係を明らかにしてゆくことが重要である.
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