研究概要 |
液晶の高い異方性・配向性により多岐にわたる有機反応を高度に制御することを目的として検討を行ない下記知見を得た。 1.光2量化反応:室温付近で明確な中間相を示すサ-モトロピック液晶を異方性媒体として、ウラシル誘導体(1,3,5-トリメチル、1,3,6-トリメチル体及び1,3,5,6-テトラメチル体)の光2量化反応を巾広く検討し、液晶媒体下、特に秩序度の高いスメクチック相下で高選択的高効率変換が進行することを見いだした。液晶媒体の効果は、溶質分子の単なる濃縮化(局在化)だけでなく、特定の規則的配向にも及んでいるものと思われ、液晶構造の特異性を明確に示すことができる。 2.熱環化反応:光変換反応例とは異なり、液晶構造を利用して100°〜200℃で惹起される熱反応を立体化学的に高度に制御することに成功した例はない。本研究では、明らかに規則的液晶構造をとる反応基質(反応性液晶)を用いることにより、立体選択性の高い熱環化反応を達成することができた。即ち、150℃前後で明確な液晶構造を示すジエノフィル(フマ-ル酸エステル類)を開発し、これを媒体兼用に用いる2,6-ジアルコキシアントラセンとのDiels-Alder反応を検討した所、液晶相下では、72%d.e.以上の高い立体(位置)選択性が認められた。等方性相下での選択性は低く(20%d.e.以下)、反応分子の規則的配列の重要性が示唆され、汎用性に向けての検討に明るい展望が得られた。
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