宇宙の大域的構造の研究は、我々の宇宙の質量をになっている暗黒物質の正体をつきとめる上で非常に重要な手段となっている。それぞれの暗黒物質のモデルによって、密度ゆらぎのスペクトルがどのようなものになるかは、線形理論を用いて正確に求めることが可能であるが、それを現在の構造とむすびつけるためには、三次元非線形重力多体系の時間発展を調べるというやっかいな問題が存在する。我々は、従来と全く異なるツリ-法というアルゴリズムを用いて粒子法によってこの重力系を数値計算するコ-ドを完成させた。特にこの種のコ-ドとしては初めて周期的境界条件をとり入れるために、エバルト法という物性物理で用いられている手法を応用した。 このコ-ドを用いてまず、重力熱力学という一つの理論モデルが現実の数値実験とどの程度一致するかを調べた結果、一般にはこの理論では宇宙の構造のパタ-ンを説明できないことが示された。しかし、この理論を現象論的モデル用いて拡張すると、観測されている銀河の分布から、宇宙初期の密度ゆらぎのスペクトルの形を知ることが可能であることを発明した。 次に粒子数として26万体を用いて、より精密に密度ゆらぎの初期のスペクトルとその後の非線形進化との関係を調べた。この結果、初期のゆらぎのスペクトルによって成長の速度が決定され、ある種のスケ-リング解に一致することが示された。
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