ラブロック重力理論は、アインシュタインのラグランジアンに高次の曲率項を付加したもので、この研究は重力の非線形効果や量子効果を明らかにすることを目的とする。この観点から今年度の成果は2つに分けられる。 1.重力と結合したスカラ-場のドメイン・ウォ-ル構造の研究 高次曲率項を持つ重力理論はスカラ-場の自由度を持ったアインシュタイン理論と同じ性質を持ち得る。スカラ-場の対称性の破れによって生成されるドメイン・ウォ-ルの時空構造を調べた。静的なドメイン・ウォ-ル解が存在するためのスカラ-場のポテンシャルに対する制限が得られた。また、ドメイン・ウォ-ル近傍には斥力と引力を交互に及ぼすような微細構造があることが明らかになった。 このドメイン・ウォ-ルは非ガウス的な密度ゆらぎの種として興味深い。 1.ウォ-ムホ-ルの量子力学 宇宙の量子論では確率解釈の可能な波動関数を導入することが困難である。これはハミルトニアンがゼロになってしまうことに根ざしている。そこで、全ハミルトニアンがゼロでない値を持つ漸近的平坦な時空としてウォ-ルホ-ルを考えその量子論を考えた。ウォ-ムホ-ルは2つのシュバルツシルト時空の貼合わせであり貼り合わせの自由度を量子化することによって、質量が整数の平方根に比例することが解った。これは、ホ-キング幅射の温度が質量に反比例することやエントロピ-の面積則を説明する。また、時空の因果構造が量子効果で変更されたり、時空の特異点が除去される可能性が示唆された。 貼合わせの量子論を一般化するとそのラグンジアンはラプロック重力と似た形になり興味深い。
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