本研究の目的は、準結晶上のスピン系の統計力学を調べることにある。すでに、2次元ペンロ-ズ格子上のイジングモデルのモンテカルロ法による研究を行っていたが、本年度はそれを3次元準結晶系に拡張した。具体的には20面体対称性を持つ準結晶上のイジングモデルを扱った。格子上にスピンがある場合(バ-テックスモデル)と準格子を作る菱面体の中心にある場合(センタ-モデル)の両方をモンテカルロ法にによって調べた。なお特筆すべきことは、マルチスピンコ-ディングの特技とス-パ-コンピュ-タの高度利用によるアルゴリズム上の工夫により、43784個という大きなサイズの3次元準格子系のシミュレ-ションを可能にしたことである。系は明瞭な2次転移を示し、有限サイズスケ-リングによる解析により、臨界指数が3次元規則格子の指数と同じである、すなわち、普遍性が成立することを示した。これは、2次元系の場合と同様の結論である。バ-テックスモデルの場合もセンタ-モデルの場合も、単純立方格子の場合と同様に、平均的な最近接格子点の数は6で同一であるが、3つのモデルの臨界温度を比較すると、バ-テックスモデルが単純立方格子より高く、センタ-モデルがそれより高いことが求められた。これは、最近接格子点の数に分布がある格子の方が臨界温度が高くなるという2次元系からの予想とは異なり、興味深い。
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