研究概要 |
1.a-Sr-Cu-O系超伝導体の常伝導相(T>Tc)の帯磁率をホ-ル濃度を変えて測定した。磁気天秤を用い1200Kの高温まで測定した。この結果銅スピンの2次元面内の相関の強さについての情報を得ることに成功した。特にホ-ルが遍歴性を持つとスピン相関の強さが激減し,同時に超伝導が現れることを初めて見いだした。また銅の代わりに亜鉛を少量置換してやると,超伝導が消滅することとスピン相関が消滅することがほぼ同時に起きることを初めて発見した。これらの事実は超伝導発現機構を探る上で大きな役割を果たす。 Bi系超伝導体の低温相(2212相)について,2価のカルシウムを3価のイットリウムと置換することによりホ-ル濃度を制御した。この結果,Bi系低温相はホ-ル濃度の少ないときは絶縁体となり,反強磁性体となることを初めて実験的に示した。またホ-ル濃度を増大してゆくと超伝導が現れ,銅一個当りのホ-ル濃度が0.15個に達すると転移温度Tcが最大になることを初めて示した。さらにTcをその最大値(93K)で規格化すると,その電子相図がLa系のものと大変似てくることを初めて示した。 Bi系超伝導体の高温相(2223相)の完全な単一相の作製に成功し,さらに高温下で圧力を加え,焼結密度を理想値の近くまで上げることに成功した。この新しい「一軸性応力ホットプレス法」により製作した試料の臨界電流密度Jcを測定した。この結果液体窒素温度下においてJc=10000A/cm^2というバルクの値としては世界最大の値を得ることに成功した。この結果は酸化物高温超伝導体の応用に道を開くものとして注目されている。
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