研究課題/領域番号 |
01631510
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研究種目 |
重点領域研究
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
山下 正廣 名古屋大学, 教養部, 助教授 (60167707)
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研究分担者 |
平尾 公彦 名古屋大学, 教養部, 教授 (70093169)
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研究期間 (年度) |
1989
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研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1989年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | ハロゲン架橋混合原子価錯体 / 低次元白金系混合原子価 / 電子格子 / 電子相関 / 電荷移動 |
研究概要 |
Pt、Pu、Niのハロゲン架橋一次元鎖状M^<II>-M^<IV>混合原子価錯体は電子格子、電子相関・電荷移動の競合している系であり、そのために高次の共鳴ラマン、大きなスト-クスシフトをもつ発光、大きな振動子強度をもつ電荷移動吸収帯、ソリトンやポ-ラロンに基づくミッドギャップ吸収などこれまでの半導体にはみられないような興味ある物性を示す。本研究において、架橋ハロゲンが金属間の中央にある(つまりパイエルス歪をおこしていない)M^<III>化合物の合成と物性について調べた。 これまでの研究より、金属としてNiを用いればパイエルス歪のない化合物が得られる可能性があったので、Ni(l-chxn)_2X_2を無水2-メトキシエタノ-ル中で除々にハロゲン酸化することにより合成を試みた。その結果、X=Clの場合は黄金色の針状晶、X=Brの場合は黒色柱状晶が得られ、組成式はNi(l-chxn)_2X_3であった。単結晶X線構造解析の結果、いずれも架橋ハロゲンは金属間の中央にあり、パイエルス歪をおこしていないことがわかった。ハロゲン架橋一次元鎖状Ni^<III>化合物の世界で最初の例である。いずれも半導体的挙動を示し、室温の伝導度と活性化エネルギ-はX=Clで1×10^<-3>Ω^<-1>cm^<-1>、0.19eVであり、X=Brで2×10^<-2>Ω^<-1>cm^<-1>、0.11eVである。又、単結晶反射スペクトルにおいて針状方向にのみ強い電荷移動吸収帯が現われ、ピ-ク位置はX=Clで1.9eV、X=Brで1.28eVである。X=Br化合物の単結晶磁化率およびESRの結果、室温から低温まで磁化率は非常に低い値(〜10^<-7>emu/g)を示し、ほとんど温度変化しないことから、各Ni^<III>上のスピン間に強い反強磁性相互作用が働いていることがわかった。この挙動はBonner-Fisher理論曲線でうまく再現でき、J〜3600Kと見積もられた。これは酸化物銅超伝導体に比べても3倍程大きい値いである。このような珍しい状態を安定化させた要因として鎖間をつなぐ水素結合が重要であろうと考えられる。
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