研究概要 |
反応性プラズマを用いた電子材料のCVD(化学気相堆積法)においては、、基板表面に輸送されるラジカルの流束とその組成の最適化が重要な課題である。本研究では、プラズマ中で生成される種々のラジカルの絶対密度の計測法を確立し、その空間分布を測定することによって、拡散による流束を評価すること、また、その結果に基づいてラジカル組成や流束を制御する方法を考案することを目的としている。本年度は昨年開発したレーザー誘起蛍光分光法(LIF)としきい値イオン化質量分析法(TIMS)を活用して、CH_4,SiH_4プラズマ中のCH,CH_2,CH_3,Si,SiHなどのラジカルの計測を進めるとともに、新たに共振器内レーザー吸収分光法(ICLAS)を用いた定量測定法を開発し、SiH_2の測定を行った。また、輸送されたラジカルが表面で反応消滅する確率を導出し、薄膜形成機構について考察した。以下に本年度の主要な成果を列記する。 1.平行平板型RF放電CVD装置を用いて、SiH_4プラズマ中のSi,SiH,SiH_2ラジカルの密度とその空間分布をLIFやICLAS法で測定した。また、基板表面付近の密度勾配と拡散定数から、基板へのラジカル流束を推定し、膜形成におけるそれぞれのラジカルの寄与を評価した。 2.CH_4プラズマ中のCH_2,CH_3ラジカルの密度と空間分布をTIMS法によって測定した。また、パルス放電遮断後のラジカル密度の減衰率から、それらの空間反応の速度定数や表面での消滅確立を実測した。 3.種々の空間反応や表面消滅確率を取り入れた一次元の反応モデルによって、ラジカルの空間分布や輸送量を計算した。その結果を上記の実験値と比較検討し、モデルの妥当性と予測への有用性が示された。 4.基板上の細溝(トレンチ)の膜被覆形状をモンテカルロ計算と比較することによって、表面に輸送されたラジカルの消滅確率と正味の付着確率を分離して決定する方法を確立し、SiH_3について両者の値を導出した。
|