研究概要 |
立方晶NaCl型結晶構造を持つセリウム・モノプニクタイト(CeX,X=P,As,Sb,Bi)が示す異常磁気異方性を説明するめに導入されたp-f混成模型は、その後この系の種々の異常物性の解明に使われ、大きな成功を収めている。CeXの参照系LaXは、価電子帯がプニクトゲン(X)のp軌道、伝導帯がLaのd軌道より成り、これらのバンドが僅かに重なった半金属である。CeXでは、占有されたf状態と価電子帯との混成(p-f混成)により、価電子帯のトップが押し上げられキャリヤ-数が急激に増加することによる非線形効果が、異常磁性の起源である。本研究ではp-f混成模型のアクチナイド系への拡張として、U_3P_4に代表されるウラン・プニクタイト(U_3X_4)の研究を始めた。非磁性参照系Th_3As_4は電気抵抗より0.44eVのギャップを持つ半導体であり、Thの一部をUで置換すると急激にキャリヤ-数が増加することから、やはりp-f混成効果が重要な系と考えられる。Th_3P_4及びTh_3As_4の電子構造を自己無憧着APW法で求めた。満たされた価電子帯はプニクトゲンのp軌道で、空の伝導帯はThのd軌道で形成され、これらのバンド間にギャップが生じる。計算で得られたギャップの大きさは各々0.0068、0.050eVと非常に小さいものであり、この不一致の原因は良く知られた局所密度近似の不備によるものである。U_3P_4、U_3As_4の磁気秩序は強磁性ではあるが、non-collinearな複雑な構造である。現在この様な複雑な磁気構造下での電子構造を求める計算プログラムの開発中である。最近ウラン3元系UNiSnが反強磁性秩序と共に、半導体(常磁性)-金属(反強磁性)転移を示し多くの興味を集めている。参照系ThNiSnの電子構造を求めたところ、ギャップの大きさ0.484eVの半導体となった。このことより常磁性状態ではUは4価で存在し、磁気秩序に伴いp-f混成効果により価電子帯が押し上げられ金属状態に転移するこが理解される。
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