研究概要 |
ウサギ肝ミクロゾ-ムチトクロ-ムP-450_<PB>再構成系による種々の置換基Xを有するN,N-ジメチルアニリン(以下,DMA-Xと略す)の酸化的N-脱メチル化反応速度について次の事実が見出された。 1.本再構成系によるDMA-Xの酸化的N-脱メチル化反応は,基質DMA-X濃度についてミカエリス-メンテン型となり,logV_<max>はXのσ^+置換基定数に対して負の勾配をもつ直線関係を示す。 2.分子軌道法による理論計算では,DMA-Xの酸化的N-脱メチル化に含まれる素反応過程で,この様な置換基効果を示すのはDMA-Xから酵素酸化活性種に-電子酸化される過程のみである。 3.休止状態チトクロ-ムP-450と基質DMA-Xの相互作用を可視スペクトルで観測したところ,X=p-CNを除いてI型差スペクトルを示し,ヘム鉄を高スピン側に変化させる。その程度(△G^<int>)は,Xの電子効果に依存しており,σ^+定数に対して正の勾配をもつ直線関係を示す。即ち,チトクロ-ムP450還元酵素からチトクロ-ムP-450・DMA-X複合体への電子伝達速度の対数は,σ^+定数に対して正の勾配をもつ直線関係にあることを意味する。 以上の知見から,本酵素反応は,DMA-Xが酵素酸化活性種によって一電子酸化され,DMA-Xカチオンラジカルが生じる過程が律速段階に含まれる機構で進むことが明らかになった。 次に,DMA-XカチオンラジカルのN-メチル基のC-H結合切断の知見を得るために,一方のN-メチル基のみを重水素化したDMA-X-d_3の酵素反応を行ない,生成したNー脱メチル化物の質量分析からDMA-X-d_3カチオンラジカルのC-H結合切断の分子内一次重水素同位体効果を算出した。他方,西洋ワサビペルオキシダ-ゼについても同様の実験を行ない,両者をマ-カス理論を用いて比較検討し,興味ある結論が得られた。
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