研究概要 |
本研究は脳細胞の分裂期、静止期における食品の必須脂肪酸バランスの重要性を評価すること、および食餌必須脂肪酸バランスが脳神経機能に及ぼす機構の生化学的基盤を探ることを目的とした。 ラット(4週令)にシソ油あるいいはベニハナ油を5%含む餌を与え、11週令で交配し、仔は3週令で離乳した。各々半数について、餌を離乳後に交換し、4群について11週令から学習能試験を行った。学習能試験が終わったラットの脳を部位別に分け、各種の酵素活性を比較した。 学習能(正反応率)は二世代にわたってベニハナ油食を与えた群のみ有意に低く、他の三群(二世代にわたってシソ油食を与えた群および餌変換群)は共に高い学習能を示した。脳のドコサヘキサエン酸量もそれに対応していた。 次に、膜リン脂質のアシル鎖の影響を受けると報告されている各種酵素、伝達物質に関わる酵素(アセチルコリンエステラ-ゼ(AchEase)、コリンアセチルトランスフェラ-ゼ(CATferase)、サイクリックヌクレオチドホスホジエステラ-ゼ(CNPDase、ATpase)の活性を比較した。脳の各部位におけるこれら酵素活性は、シソ油食群とベニハナ油食群とで差がなかった。次に、脳細胞のオルガネラを分離し、酵素活性を比較した。しかし、シソ油食群とベニハナ油食群とで有意な差はなかった。 以上の結果は次のように要約される。 1.18:2n-6の多い餌を二世代まで与えると、18:3n-3の多い餌の群に比べて学習能が低いが、離乳時に餌を変換すると、回復する。 2.この食餌脂肪によってもたらされる学習能の差は、脳のNa,K-ATPase,Ca-ATPase,5'-Ntidase,AchEase,CATferase,CNPDaseなどの酵素活性の変化を伴わない。
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