研究概要 |
脊髄運動ニュ-ロンに投射するセロトニン線維は投射形成の過程で一過的に増加し(フ化後1週目),その後減少することにより特異的な標的(特定の運動ニュ-ロ-プ-ル)に投射形成することを免疫組織化学的に確め発表(J.Comp.Neurcl,Vol.267)したが,この現象を生化学的に検討した。即はち5日胚からフ化後120日のニワトリの脊髄を,頸,胸,腰髄に分け,電気検出器付き高速液体クロマトクフフィでセロトニン濃度を測定した。その結果,脊髄の各レベルでフ化後1週目をピ-クとする一過的な濃度増加の起ることを確めた。また脊髄外のセロトニン濃度についても検討したところ,6日胚では脊髄内に比べ30倍を越える濃度のセロトニンが脊髄外の交感神経節,膜大動脈神経節,前腎,消化器壁に分布していることが明らかになった。これらの脊髄外セロトニン濃度の一過的増加がこれまでのRossらの研究では5日胚を中心とする脊髄の一過的セロトニンと誤解されていたものと考えられる。従ってセロトニンがこの頃の脊髄発生の調節を行っているとする彼等の主張は崩れたことになる。我々の研究では5〜6日胚と言う若い時期ではなく,フ化後の一過的セロトニン上昇期でのセロトニン神経発生調節機構が存在することが強く示唆された。 一方セロトニン以外のモノアミン線維としてタイロシンハイドロキジレ-ス場性線維の前角内分布について検討を行い、タイロシンハイドロキシレ-ス場性線維もセロトニン線維と同じく不均一な分布を示すことが明らかになった。しかしその分布様式はセロトニンと大きく異り、特に頸膨大部の内側運動核に特に高密度に分布することが観察された。
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