研究概要 |
Pエレメントの転移に必須な遺伝子の探索を、Pエレメントベクタ-を用いたinsertional mutagenesis(jumpstarterで行った。W^+のマ-カ-をもつPエレメントベクタ-がX染色体に挿入したyw系統のハエに、転移酵素供給源としてのPエレメントP△2,3が挿入した第3染色体を交配により導入すると、Pエレメントベクタ-の切り出し、再挿入等が起こるため、ほとんどのF_1個体で複眼が赤、白のモザイクとなる。このとき生殖細胞中では染色体へのPエレメントの再挿入により新しく突然変異が生ずるが、その中にはPエレメントの転移に必須な遺伝子への挿入もあるものと期待される。そのような場合には、再度交配により転移酵素を供給してもPエレメントベクタ-は転移できないため、複眼がモザイクとならず赤眼のままであるF_2個体が得られるはずである。 実際、F_1のモザイク個体にC(1)DX,ywf;△2,3系統を交配して得た合計23774のF_2雄個体中、320個体が赤眼を示した。これらの雄183個体について、1個体ごとにC(1)DX,ywfを交配し、モザイクの子孫の検出されなかったのは、131であった。このPエレメントベクタ-がどの染色体に転移したものであるかを知るため、上記の交配から得られる子孫中の眼色の分離比を調べたところ、131のうち129はベクタ-がX染色体上にあると判定された。さらにこれらの突然変異系統については、再度交配により転移酵素を供給し、Pエレメントベクタ-が転移するかどうかを確認中であるが、調べた49系統のうち31系統が赤眼を示した。F_2世代での赤眼の雄個体の出現率1.3%は、insertional mutagenesisにおける突然変異率から考えて異常に高頻度であり、このなかにはPエレメントベクタ-自身に新しく生じた点突然変異や欠失などが含まれている可能性がある。現在、得られた突然変異系統について、ベクタ-の染色体上での位置の決定、及び構造の確認を行っている。
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