研究概要 |
蚕のE遺伝子群は体節構造の決定を行うホメオティク遺伝子群である。研究代表者はこの遺伝子群はホメオボックス遺伝子が複数集った遺伝子群であると想定し、クロ-ニング及び構造解析を行っている。 これまでに当研究室では、蚕の遺伝子の中に、ショウジョウバエのAntennapedia(Antp)のホメオボックスのアミノ酸配列と完全に一致するAntpホモログが存在することを明らかにしている。研究代表者は本年度の研究で、このAntpホモログと塩基配列が非常に類似した遺伝子をクロ-ニングし解析を行った結果。この遺伝子はショウジョウバエのSex comb actuced(ser)のホメオボックスとアミノ酸配列が100%一致する配列をもつことが明らかになった。またこのAntpホモログとScrホモログの距離を高分子量DNAの解析ができるパルスフィ-ルド電気泳動を用いて解析した結果、100キロベ-ス以内に共存することが明らかになった。さらに他のホメオボックス遺伝子としてUltrabithorax(Ubx)ホモログをクロ-ニングすることにも成功している。これらAntp,Scr,Ubxホモログの特長は、そのホメオボックス部分の塩基配列をショウジョウバエのものと比較した場合は80%程度の類似性しかみられないのに対し、アミノ酸配列では100%一致していることである。以上の研究により、ショウジョウバエでは体節構造の決定に重要な役割りをしている3つの遺伝子のホモログが蚕にも存在することが明らかになり、今後蚕の形態形成の制御機構の解析の糸口になると考える。
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