研究概要 |
(1)ブタ頸動脈脈平滑筋を用いて種々の収縮による20Kミリオシン軽鎖(MLC)リン酸化と張力の相関を検討した。ヒスタミンは細胞内Ca^<2+>濃度(〔Ca^<2+>〕i)の初期の一過程の上昇と,その後に引き続く基礎値よりわずかに高い持続的上昇の変化に一致して、1分後に頂値を示す20KMLCリン酸化をひきおこす。収縮60分後の時点において,なお基礎値より有意に高いリン酸化が観察される。高K^+刺激もヒスタミンと類似の20KMLCリン酸化の経時的変化を示し,収縮60分後の時点において有意なリン酸化が観察される。フォルポ-ルエステルは,ヒスタミン,高K^+刺激に比較してゆるやかな張力発生を示す。これに伴い20KMLCのリン酸化も除々に増大するが,発生する張力に比較してリン酸化の程度は小さい。X軸に60分後の20KMLCリン酸化を,y軸に60分後の張力をプロットすると,上記3種の収縮刺激のうち,ヒスタミンと高K^+刺激はほぼ同一のリン酸化・張力曲線を示す。一方,フォルボ-ルエステルによるものは明らかにこれとは異なる。サイクリックAMP(CAMP)を上昇させるフォルスコリンはこれら3種の刺激による収縮を抑制するが,これに伴ってヒスタミン及び高K^+刺激の場合には弛緩に伴いリン酸化の抑制がみられるのに対し,フォルボ-ルエステルによるリン酸化はごく軽度に抑制されるのみである。ピロリン酸ゲル電気泳動による解析(郡立臨床研大室博士との共同研究)ではフォルボ-ルエステル刺激では,ヒスタミン高K^+刺激とは移動度の異なるリン酸化ミオシンが観察された。動脈平滑筋は主としてCキナ-ゼのα型アイソザイムを有しフォルボ-ルエステル刺激によって細胞質中のCキナ-ゼは経時的,濃度依存的に減少した。(2)新しい生理活性ペプチドエンドセリン-1の作用機序を培養血管平滑筋細胞を用いて検討した。エンドセリンは特異的受容体に結合し,G蛋白質を介してフォスフォリパ-ゼCを活性化することが明らかとなった。
|