研究概要 |
我々は、ボツリヌス毒素中のADPリボシル化酵素が分子量21kの細胞蛋白質を特異的に修飾することを見出し、昨年度の本研究で気質蛋白を均一にまで精製、これがGTP結合蛋白質であることを見出した。本年度はこれらの成果を受け以下の研究を行った。 1.ADPリボシル化基質蛋白質(Gb)のcDNAクロ-ニングとADPリボシル化部位の決定 精製蛋白質の部分アミノ酸配列をもとに基質蛋白(Gb)のcDNAクロ-ニングを行い、これが193個のアミノ酸より成る分子量21,770の蛋白であることを明らかにした。また、配列の相同性よりこれがrhoA遺伝子の産物であることが明らかとなった。また、〔^<32>p〕NADによって修飾したGbを解析した結果、ボツリヌス毒素によるADPリボシル化がこの蛋白のアミノ末端より41番目に位置するアスパラギン残基に起っていることが明らかとなった。結合の安定性よりADPリボ-スはアスパラギン残基とN-グリコシド結合を成しているものと考えられる。 2.ボツリヌス毒素中のADPリボシル化酵素の分離・同定 C型ボツリヌス菌は、C_1,C_2という毒素成分とC_3という酵素成分を産生する。このうち、C_1毒素とC_3酵素は同様のADPリボシル化酵素活性を示すことよりその異同が問題となっていた。そこで我々は、これら各々に対する抗体を開発し、これを用いてC_1毒素中の酵素活性について検討した。この結果、C_1毒素中の酵素活性は毒素標品中に微量に含まれるC_3様蛋白によるものであること、これは主たる毒素成分より分離できるものであることを明らかにした。
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