研究概要 |
新生ラット背髄より厚さ120μmのスライスを作製し、顕微鏡直視下に、運動ニュ-ロンよりwhole-cell記録を行って、セロトニン誘発電流を解析した。(1)セロトニンは、運動ニュ-ロン固有の内向き整流コンダクタンス(Takahashi,1990)を増強して興奮作用を発揮することが明かとなった(Takahashi & Berger 1990)。このセロトニン作用は、I_A型受容体アゴニスト8-OHDPATにより擬似され、アンタゴニストspiperoneにより拮抗されることから、I_A型受容体を介することが示唆された。 (Takahashi & Berger,1990)。(2)セロトニンには、また運動ニュ-ロンの電位依存性Ca電流を増強する作用があることが見いだされた。この作用は、低闘値活性型のCa電流に対して特異的で、高闘値活性型Ca電流には影響を与えなかった。(Berger & Takahashi,in press)。低闘値型Ca電流は、一般にニュ-ロンの発火頻度を制御する因子の一つと考えられており、セロトニンによる低闘値Ca電流の増強は、(1)の内向き整流コンダクタンス増強作用と相まって運動ニュ-ロンの興奮を惹起すると結論された。(3)セロトニン作用を媒介する細胞内メッセンジャ-の検討を行った。二本のパッチ電極を一個の運動ニュ-ロンに適用して、片方の電極より環状AMPを細胞内投与して膜電流への作用を検討した。環状AMPは、内向き整流電流を惹起し、運動ニュ-ロン固有の内向き整流電流及びセロトニン誘発電流と同様にCsの細胞外投与により抑制された。従って、環状AMPがセロトニンの(1)の作用を媒介する可能性がある。一方、環状AMPは、低闘値Ca電流に対しては、ほとんど影響を与えなかった。従ってセロトニンの(2)の作用は環状AMP以外の細胞内メッセンジャ-に媒介すると推察される。
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