研究概要 |
前年度までにPKC群各分子種についてCOS細胞におけるcDNA発現系を用いて種々の生化学的性質の検討を行なってきた。その過程でnPKCεが従来のPKC(α,β,γ)とは質的に異なる新しい蛋白質である事を明らかにした。本年度はこれをさらにおし進め、キナ-ゼの基質特異性、細胞膜との相互作用、down-regulation等について各分子種の比較を行ない、明確な差のある事を見い出した。同時に各分子種のcDNAを3Y1細胞に導入する系を用いて生細胞レベルでの機能をその転写活性化能を指標として検討し、各PKC,nPKC分子種間に大きな差異のある事を見い出した。以下順を追って述べる。 1.COS細施のcDNA発現系を用いて精製したPKCα,nPKCεとを用いて種々の精製蛋白質に対するリン酸化能を試験管内で検討した。その結果多くのPKC基質がnPKCεの基質にもなる事が明らかとなった。一方徴小管結合蛋白質群(MAPs)の一つtの分画に混在する蛋白(p140)がnPKCεによってのみきわめて効率よくリン酸化される事を見い出した。 2.PKC,nPKCをoverexpressionさせた細胞を用いてホルボ-ルエステル処理後の各分子種の細胞内での動態を検討した結果、nPKCεについても細胞膜への移行、down-regulationという現象の起る事が明らかとなった。しかしその速度、様式は異なっていた。試験管内での細胞膜との結合実験においてPKCとnPKC間でそのco-factor依存性の明確な差のある事が確認された。 3.ホルボ-ルエステル応答性遺伝子の転写活性化能をPKC,nPKCについて生細胞レベルで検討した結果、各分子種間でその遺伝子特異性に明確な差が認められた。 以上を総合するとPKC,nPKCε各分子種は細胞内で異なった生理機能を担っている事が示された。
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