研究概要 |
1.反応性蒸着法によるYBaCuO薄膜の作成 電子鏡が2つ,抵抗ヒ-タ-が1つの3つの蒸発源をもつ同時蒸着装置を用いて,YBaCuO薄膜の作成を行った。蒸発源にはY,Ba,Cuの金属を用い,装置に酸素ガスを導入しながら,SrTiO_3またMgOの基板上に薄膜を堆積した。良質な薄膜が得られる条件は,基板濃度,酸素ガス圧,蒸着レ-ト,rfプラズマの状態,アニ-ル時の酸素圧などに依存するが,実験の結果,最適条件は基板温度650℃,酸素ガス圧10^<-4>T_<orr>,蒸着レ-トが数Å/sec程度のときであり,そのとき薄膜のTcは最高92Kが得られている。またX線回折および走査型電子顕微鏡の観察の結果,薄膜のC軸配向は強く,ほぼエピタキシャル成長した薄膜になっていることが確かめられた。さらに蒸着中のrfプラズマの効果はほとんどないことも判明した。 2.YBCO/MgO/YBCo積層膜の作成 S-I-S薄膜トンネル接合を目指して,真空蒸着装置内に取り付けられたマスク合せ機構を用いることによつて,YBaCuO/MgO/YBaCuO多層膜の堆積を行なった。YBaCuO膜の厚さは150-200nm,MgO膜の厚さは15-30nmであった。その結果わかったことは,両方のYBaCuO膜を応650℃で蒸着すると,一方の膜の超伝導性がこわれてしまうこと,一方の膜を650℃で,他方の膜を600℃で蒸着した場合は共にTcが70k以上の超伝導となることである。すなわち単層膜の成長最適条件と多層膜のそれとは明らかに異なる。S-I-S接合が実現するためには上,下の2つのYBaCuO薄膜が超伝導になることのほかにしっかりした薄い絶縁バリヤを形成する必要がある。これについてMgO界面における拡散,表面の超伝導性の劣化など考えての研究が進行中である。
|