研究課題/領域番号 |
01644518
|
研究種目 |
重点領域研究
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
早川 尚夫 名古屋大学, 工学部, 教授 (60189636)
|
研究分担者 |
井上 真澄 名古屋大学, 工学部, 助手 (00203258)
藤巻 朗 名古屋大学, 工学部, 助手 (20183931)
高井 吉明 名古屋大学, 工学部, 助教授 (50109287)
|
研究期間 (年度) |
1989
|
研究課題ステータス |
完了 (1989年度)
|
配分額 *注記 |
17,000千円 (直接経費: 17,000千円)
1989年度: 17,000千円 (直接経費: 17,000千円)
|
キーワード | 高温超伝導体 / 近接効果 / トンネル接合 |
研究概要 |
目的 高温超伝導体によるジョセフソン接合形成の試みは、高温超伝導体が発見された当初からなされ、焼結体を用い接合形成、粒界接合など、多くの研究報告がある。筆者らは高温超伝導体を用いたジョセフソン接合形成を目指し、その基本的な接合形成技術の開発と様々接合界面における超伝導物性の基礎的理解を得るため、常伝導金属による弱結合ブリッジおよびSNS接合、SNIS接合の作製とその超伝導特性の評価などの研究を行い、その特性を評価することを目的とする。 結果、積層型SNS、SNIS接合の作製と特性評価 接合を形成する場合、接合界面付近における超伝導特性の優劣が接合特性に及ぼす影響が大であることは言うまでもないが、高温超伝導体のように顕著な異方性、短いコヒ-レンス長、化学的に不安定な表面層を有した素材の場合、特に創意工夫が要求され、たとえば常伝導金属層を介する近接効果などの利用が考えられる。しかしながら、高温超伝導体と常伝導金属との超伝導接合に関しては高温超伝導体の超伝導キャリア密度が通常の金属超伝導体に比べて桁違いに小さく、そのため、通常の金属超伝導体と常伝導金属の間の近接効果とは異なり、高温超伝導体側で比較的超伝導性の劣化が大きいことが判った。そこで、Nb/Ag/YBCO、Nb/A10_x-Al/Ag/YBCOの構造を有したSNS、SNIS接合をin situで作製し、その作製条件と超伝導電流、エネルギ-ギャップなどの超伝導特性との関係を考察した。 ここでは特に後者に関して述べる。近接効果によりYBCO超伝導性がAl層まで伝えられていると考えた時、AlO_xを狭んでSIS接合となるため、I-V特性にはYBCOから伝えられエネルギ-ギャップ△_<nl/Ag/YBCO>が現われる。SNIS接合の電流電圧特性から評価されたエネルギ-ギャップ△_<Al/Ag/YBCO>はAg層の厚さに依存して、Ag層を薄くするにつれてエネルギ-ギャップが大きくなることが明らかとなった。この時、Agの厚さを零にまで外挿して得られた、YBCO表面でのエネルギ-ギャップが3meVにまで低下していることが判った。通常YBCOのエネルギ-ギャップは11meV程度と言われており、それに比べればかなり小さくなっている。一方、YBCOの代わりにNbを用いて同様な実験を行うと、Agの厚さを零に外挿して得られた△_<Nb-Ag-Al>の値はほぼNbのエネルギ-ギャップに等しい結果が得られた。この原因としてはさきに述べたように、YBCOの超伝導キャリア密度がAgの電子密度に比べて、1桁程小さく、YBCOへAgから多数の準粒子が拡散し、YBCO側の超伝導性を低下させたものと考えられる。Nbの系ではNbの超伝導電子密度が2.78x10^<23>cm_<-3>と大きく、Agからの準粒子の拡散はNbの超伝導性にほとんど影響を与えたものと考えられる。このように、YBCOではそのエネルギ-ギャップがAgなどの常伝導金属と接触させただけで、大きく低下し、しかも界面から数十オングストロ-ムにわたってその低下が見られることが明らかにされた。現在、他の電子密度の少ない半金属などを用いてさらに検討を進めている。
|