研究概要 |
Cu系ペロブスカイト類似化合物におけるAサイトおよびCuサイトの異種元素による置換固溶が結晶構造および酸素欠陥量と臨界温度に及ぼす影響について詳細に検討した。ペロブスカイト型酸化物の電気伝導性はBサイト元素によって支配されるので主に、Y-Ba-Cu-O系化合物のCuサイトのlatom%をCuのイオン半径に近いIn,Ti,Nb,Mo,Alなど十数種類の元素で置換固溶したところ、臨界温度はa軸方向の格子定数の増加とともに低下することを明らかにした。a軸方向はO-Cu-O結合に対応し、Cu-O面における酸素占有率の増加とともに臨界温度は高くなると考えられる。とくにNb置換系では置換前に比べ高い臨界温度を示すことを見出した。さらに、Y-Ba-Cu-O系化合物の抵抗の酸素分圧依存性について検討したところ、抵抗値は600Kまでは酸素分圧に依存しないが、600K以上では酸素分圧の増加とともに抵抗値が減少する、p型半導性を示すことを明らかにした。Y-Ba-Cu-O系ペロブスカイト型酸化物の電気伝導機構において酸素欠陥が重要な因子となるこを示しており、高温においてはホ-ルが電荷担体となることがわかった。一方、Bi-Sr-Ca-Cu-O系化合物についてもBiサイトを0.1atom%、Sn,Pb,Sbで置換したところ、SnおよびSbで置換した化合物ではそれぞれ110K、100Kで超伝導状態となったが、Pbで置換した化合物では半導体となった。また、この系の焼結雰囲気を変えることによりCuの原子価の異なる試料を調製し、超伝導特性に与える影響を検討したところ、Cuの平均原子価が2.3付近で最も高い臨界温度が得られた。以上のようにペロブスカイト型酸化物の超伝導臨界温度はAまたはBサイトの少量置換により著しく変化し、試料の調製雰囲気の影響からも分かるように、これらの効果はCuの原子価状態すなわちCu-O結合状態にきわめて密接に関連しており、構成元素制御することによってさらに新しい高温超伝導体が開発できると考えられる。
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