研究概要 |
本年度は当初の研究計画に基づいて以下のことについて研究を推進した。1)酸化物超伝導体に捕獲された磁束の運動に伴う力を測定するための装置開発及びその測定、2)Tl-Srを基礎にした新超伝導体の探索、3)超高圧装置を用いた新しい材料の開発とピニング機構の解明と準備実験。 目的1)に関して第一報を報告した^<1)>。勾配磁場下での超伝導体の運動を力学的に観測することにより、ピニング中心に捕獲された磁束の運動に伴う力を直接評価する方法を開発した。その結果従来よく知られているようにこの系においても、エネルギ-ロスは、磁束の運動に伴って生ずるヒステリシスロスによることを示した。又、その応答特性の測定から、全金系に比べ低い周波数領域においてヒステリシスロスの周波数依存性がみられた。目的2)に関しては、Tl-Sr-Ca-Cu-O系で超伝導性の発見を始めとして、TlSr_2Ca_<nー1>CunO_<2n+3>系にPb and/or Ln(La,Nd,Y)を添加することにより超伝導体の向上がみられ、1212相と1223相が安定にしかも選択的に合成できることを報告した。^<2)>。さらにTc【similar or equal】40kの超伝導体であるTlLaSrCuO_5(1201相)を発見した^<3)>。最近Tl(Sr,Ln)_2(Ln,Ce)_2Cu_2O相を発見し報告した^<4)>。目的3)に関する主な成果は、Bi_2Sv_2CaCu_2O_<8+8>相についてのものである。この系は最近他の系に比較してピニング力が弱いために捕獲された磁束の運動、特に磁束格子の相転移に関して高い関心が集められるようになった。我々は初期の頃よりこの系に注目し酸素濃度によりTcが変化すること及び急冷特性等について学会で随時報告してきた。全体に、当初の研究計画に沿って進展しており来年度は高圧合成等の研究成果も期待できる状況である。 1)Jpn.J.Appl.Phys.,28(1989)L183,2)Jpn.J.Appl.Phys.,28(1989)L930 3)Jpn.J.Appl.Phys.,28(1989)L1926.4)to be published in Jpn.J.Appl.Phys.,29(1990)No4
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