研究概要 |
近年、オプトエレクトロニクスの分野で注目されているものに有機非線形光学材料の開発がある。非線形光学材料はレ-ザ-光に対して第二次高調波発振(SHG)あるいはそれ以上の応答を示すので応用が期待される。我々は2個以上の発色団をもつ光学活性励起子相互作用系のSHG効果を研究する目的で、次の光学活性パイ電子系スピロ化合物の分子設計、合成、光学分割、円二色性スペクトルによる絶対立体化学の決定を行った。 1.[6,6]-vespirene(1)は9,9'-spirobi[9H-fluorene](2)に側鎖を架橋することによって光学活性となる特異な化合物である。その絶対構造はPrelogらによってCDスペクトルの解析から決定された。しかし、(1)のCDは複雑であり単純な励起子型からずれており、これは発色団の架橋による強い歪みのためである。我々は理想的な励起子系としてナフタレン、アントラセン、およびナフタセン発色団を持つスピロ化合物(3)、(4)、(5)を設計し光学活性体を合成した。化合物(3)、(4)、(5)はいずれも^1B_b吸収領域に非常に強い励起子分裂型Cotton効果を示し、その符号は長波長側が正、短波長側が負であった。ゆえに絶対配置は(R)と非経験的に決定できた。化学関連から(-)-[6,6]-vespirene(1)の絶対配置を(R)と確立することができた。 2.我々はchiral building blockとして対称性が良く、分子が小さく、かつ2個の官能基を持ち系として2,2'-dimethylspiro[3.3]heptane-2,2'-dicarboxylic acid誘導体を設計し、光学活性体の合成、CDスペクトル解析による絶対立体化学の決定を行った。spiro[3.3]heptane誘導体(6)から出発して、sultamとのアミド体(7)を光学分割した後、phenylacetylene誘導体(8)に導いた。(8)のCDスペクトルは240nm付近に正の第一と負の第二の典型的な励起子分裂型Cotton効果を示した。ゆえに絶対配置を(R)と決定できた。
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